日本放送作家協会九州支部です。
第十八回南のシナリオ大賞、二次審査結果のお知らせを致します。
二次審査通過作品発表
(10作品)
1:わたしたちの選択
講評
「自分に正直に生きる」ことを応援してくれる作品だと感じました。
正晴と妻の、互いを尊重した選択にグッときました。
車内での凛の心境が丁寧に書かれていたり、未来のある終わり方だったりすることも、高評価です。
2:私の声が嫌い
講評
最初にすんなりとベース設定をわからせるのは秀逸。
学食=学生 手話=試験
次の展開で「声が嫌いだから手話をする」ことを仄めかす。
展開が早いが、すんなりとわかる。上手。書き慣れているのかな?何よりも「手話」という、ラジオドラマ向きではない内容に果敢にチャレンジしていることに好感が持てる。
欲を言えば、帰省の時の父とのやりとりが殆ど無いのが勿体無い。
最初の転調なのだから、その後の電話の部分を減らして、ここに持ってきた方が活きたかも。
またラストのDJのくだり。自分だった冒頭部分に持ってくるかなぁ…でも、ベタかなぁ…などと色々と想像させてくれる話。
リライトしたらもっと良くなりそうな気配…今後の可能性に期待大!
3:お年寄りのひとりごと(一人芝居)
講評
まず「ひとり芝居」という形式が、新鮮で面白かったです。
テンポや台詞も見事でした。最後のどんでん返しも、自分がこの世界にいないのだということに気付いた男のあっけらかんとした感じも、とてもよかったです。
4:ファスナー
講評
主人公が恋人と初めてホテルに宿泊した日、恋人の背中に直接ファスナーが付いていることに気
がつく。
人間の体に直接ファスナーが付いているという発想が、意外で面白い。聴き手もいろいろ想像させられる作品。
5:真夜中の母と子
講評
「娘を捨てた母親」が運転する深夜便トラックにたまたま同乗することになった「親から捨てられた少年」という立場の違う2人を軸にしたストーリーは巧みに計算され無駄が無い。
SEも心の動きを思わせる方向指示器の音の使い方など耳と心を満たしてくれる秀作。
映像ドラマも可能な作品。
6:きらめく丘
講評
福岡で一人暮らしの主人公。故郷は久留米市だが、母親を筑後川の氾濫で失い、川を渡れない。
だが恩師が危篤とのことで川を渡る決心。その心の変化がよく書けている。自然災害を音でどう伝
えるかが問われる。
7:山田さんのいない夜に
講評
登場人物と山田さんとはそれぞれのエピソードでつながりを持たせており、後半になるにつれ、山田さんの存在の大きさを上手く描いている。
全体を通して、飽きないストーリー展開。
「雨男の逆襲」という本の雨男こそ山田さん(カエル)であり、全てをやり遂げた満足感を最後のシーンのカエルの登場で上手く表現している。
8:庭を見る二人
講評
鎌倉期の仏教説話集に『撰集抄(せんじゅうしょう)』がある。
説話のひとつ「西行於高野奥造人事」は、死者の骨から人造人間を造ったという、なんとも不思議な話だ。
その人造人間の作り方の中に「ムクゲの葉とを灰に焼きて…」の一説がある。
さて、それを知ってか知らぬかは別として、今回の主人公は皆訝しい。
一見良人のように見える間宮も、影では毒舌を吐く。
家を売らない加賀見のおばあちゃんも、裏に謎を秘めている。
そして、ムクゲの木の下に「埋まって」いるもの…それさえ謎に包まれたまま。
結局物語も振り出しに戻って終わり。これはこれで良いのだろうけど、読んだ(聞いた)方は、わだかまりが残ったままでなんともスッキリしない。
ただ、脚本は描き慣れているんだろうなという印象。
展開もテンポ良く、場面や人物のディティールもさりげなく描いていて理解できる。
ただ…最大の「謎」を除けば…だけどミステリーにリライトしたら面白いかな(^^)
9:スカブラ
講評
効率化、コスパ、タイパ、エネパ……などなど言われる現代ですが、本当にそれでよいのですか?と問題提起をされたように感じました。
人間関係において大切にすべきことを、改めて考えさせられました。
10:新機能、かーちゃん
講評
死を迎える間際の母が遠くで暮らす息子のスマートスピーカーに乗り移り、最後の別れとして息子に秘伝の卵かけごはんを伝授するシーンは泣けた。
ただ、ストーリーが展開していく中でセリフ等で工夫が必要な個所とSEで気になる点がいくつか見受けられた。
※以上、二次審査通過10作品のお知らせでした。
二次審査結果等詳細に関することは、
お問合せ頂きましてもお返事できませんので、その点ご了承くださいませ。
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